バッハの学校 岡山

 

序文

二日に亘る講義と、コンサートのためのレッスンの時間を擁するのはここ岡山のみである。

 

岡山講義もしかし開設当初はバッハ講義が行われ、年数を重ねるにつれてピアノ音楽史の講義が、更にバッハ講義に先立つ時間にギリシア哲学と音楽の関係についての講義が設けられ、最後にピアノ音楽史の前に演奏論のための修辞学・弁論術と音楽表現の関わりを調べる時間が加えられることになった。

 

併せて実践の面からの研鑽を積んで響きに関する感性を磨くために、17・18世紀の音楽観・演奏論を踏まえてのレッスンが行われ、その成果はコンサートで問われる形態が採られている。

 

講義を受け、レッスン・コンサートの場で実践活動を行うのはいわば古代ギリシアの「学校」に近い存在であると言い得るであろう。

 

(記.丸山)

歴史

第22期(2023年度)講座
第11回特別講座 ― クラヴィコード・通奏低音・演奏解釈実技のレッスン・バロックダンス ―

バッハの『インヴェンション』序文の「カンタービレ」を再び考察します。フレスコバルディの弟子として学んだ後、フランスのバロック時代の作曲家ルイ・クープランに多大な影響を与えて新しいプレリュードのスタイル、「小節線のないプレリュード」を生み出してその記譜の流行のきっかけをもたらした作曲家フローベルガーの『トッカータ』の演奏法と、ルイ・クープランの『小節線のないプレリュード』を比較して考察します。また、これらの作曲法と演奏法及びパッヒェルベルの影響の下、バッハの『インヴェンション』のカンタービレは成り立つと考え、『インヴェンション』第10番ト長調の分析と演奏レッスンも行います。

 

クラヴィコード奏法では美しい楽器の響きに耳を澄ませ、通奏低音は初歩の段階を丁寧に説明します。バロックダンスは、遠い昔からの美しくも哀しい有名なメロディ『フォリア』を踊り、舞曲サラバンドの復習も兼ねてレッスンを行います。

 

講義内容

クラヴィコード奏法

 

通奏低音講座

 

分析と演奏法レッスン

  ルイ・クープラン:小節線のないプレリュード(Prélude non mesurée)

  フローベルガー:トッカータ第1番

  バッハ:インヴェンション第10番 ト長調

 

バロックダンス 「フォリア」を踊ろう

  (サラバンド復習を兼ねて)

第21期(2022年度)講座
シューマン — ロマン派の詩と音楽 —

2022年1月から新たな講義として「シューマン - ロマン派の詩と音楽 -」を開講します。

 

シューマンの作品の中から'22年度にはアイヒェンドルフの詩によるリートとそれに関連してピアノ小品の響き・作法について、アイヒェンドルフの原詩を読み訳しながら検討します。

 

 

なお、目下継続中の小論文による講義の内『バッハの楽譜を読む』はそのまま、これまでモーツァルト作品を扱った講義は改めて『ベートーヴェンと詩人達』をテーマとして論攷を纏めて行きます。

 

『ベートーヴェンと詩人達』は18世紀後半のドイツ語文化圏における学術・文学の流れを捉え、それを基にして『シューマンの詩と音楽』を講解するのが主たる目的ですが、各々の講義は各々に単独での纏まったテーマに基づくものです。

 

(記.丸山)

第10回特別講座 ― クラヴィコード・通奏低音・演奏解釈実技のレッスン・バロックダンス ―

バロック時代は「通奏低音の時代」ともいわれる。この流行による低音パートの重視は、広く器楽曲のみならずダンスにも見られた ― オスティナート・バスによる作曲法に用いられた素材のひとつは別名「グラウンド」の名で呼ばれ、分割による装飾法は作曲の一技法としてバッハにも影響を及ぼした ― 第10回バッハの学校岡山秋講座では、クラヴィコード奏法、通奏低音初歩講座、舞曲パッサカリアとグラウンド技法についての解説と実践、バロック・ダンスはシャコンヌ復習とパッサカリアのステップを学ぶ。

 

(記.臼井雅美)

 

講義内容

クラヴィコード奏法

 

通奏低音初歩講座

 

舞曲「パッサカリア」背景と構造の解説、演奏法とレッスン

  フレスコバルディ:『パッサカリアによる100のパルティータ』より

  フレスコバルディ:パッサカリアによるアリア『そんな風に私を軽蔑するのかCosi mi disprezzate』

  ルイ・クープラン:『パッサカイユ』

 

バロック・ダンス

  シャコンヌ復習

  パッサカリアを踊ろう(ステップ、ダンスと音楽の関わりについて)

 

バロック時代の作曲法の一つ、オスティナート・バスによる作法に活用された素材のひとつ「グラウンド」について、その定義と技法、装飾法の解説、またバッハ作品にみられる「グラウンド」について、インヴェンション第11番楽曲分析と演奏法のレッスン

  バッハ:『インヴェンション第11番』

第9回特別講座 ― クラヴィコード・通奏低音・演奏解釈実技のレッスン・バロックダンス ―

ルネサンス・バロック音楽の謎の一つは、「楽譜そのもの」が修辞的世界を持っていたということに依ります。現代に生きる私達は、当時の音楽家が遺した著書を紐解き、またそれに基づいた研究、解釈も併せて「楽譜をどう読むか」に迫る必要があります。第9回バッハの学校岡山春講座では、17・18世紀に特に盛んに演奏された「イネガル奏法」を柱に、ルネサンス時代から、歌、旋律楽器、チェンバロ、オルガン曲などでイネガル奏法が用いられた跡について当時の書物を読み、演奏者の「良い趣味」に近づく試みをいたします。またイネガル奏法を用いて舞曲「シャコンヌ」の背景と演奏法、バロック・ダンスを学び、クラヴィコード奏法、通奏低音講座で当時の純粋な響きの世界の追求と伴奏法にも迫ります。

 

(記.臼井雅美)

 

講義内容

クラヴィコード奏法

 

通奏低音初歩講座

 

フレンチ・バロック音楽のイネガル奏法について

  文献を読む, 解説と演奏法, 実践

 

バロック・ダンス

  ジーグを踊ろう

  シャコンヌを踊ろう(ステップ, ダンスと音楽の関わりについて)

 

シャコンヌ

  背景, 解説

  楽曲解説

  シャコンヌ(チャッコーナ)演奏法レッスン

  フレンチ・バロック音楽のシャコンヌ演奏法レッスン

  シャコンヌを踊ろう(ステップ, ダンスと音楽の関わりについて)

第20期(2021年度)講座
「ヨブ」と「トリスタン」 — 二人の人間・二つの宇宙 —

岡山講義:2021年からの講義は「ブラームス」と「ウァーグナー」に光を当てて二人の作品に象徴される、ヨーロッパ芸術の根幹をなす「聖書」と「悲劇」と、そこで問われた事柄の「表現」についての探求になる。

 

ブラームスとウァーグナーは明らかに対照的な世界・宇宙をその作品において響かせた、にも拘わらず二人の世界・二人の宇宙は交錯してひとつの点を求めた。それが何であるか ー そこに講義のポイントは置かれる。

 

テーマは厖大なものであり、限られた時間の中で問題を掘り下げるために二三の点を絞り出して、これを軸に思索はめぐらされることになる ー 中心をなすのは『ドイツ語の詞によるレクィエム』(ブラームス)と『トリスタン・イゾルデ』(ウァーグナー)であり、これを取り囲んでピアノ作品或いは歌の小品が取り上げられる。

 

十九世紀後半の、シュペングラーの説く「西欧の没落」の時代にあって、二人の作品は、没落し落下する抛物線を描いた時代に立ったが故に却って「オイロペ」の素顔を描くことになったと言い得るであろう。その素顔を観るために、講義は『何故光を』(ブラームス)と『温室をさまよって』(ウァーグナー)の解析から始められる

ー 察するに二つの宇宙は交わってひとつの言を語りかけることになるに違いあるまい ー 人は歩んでやがて純粋なるものに、即ち結晶し、至純にして明澄な輝きを発して在るものへと歩を運ぶことになるであろう。

 

(記.丸山)

第8回特別講座 ― クラヴィコード・通奏低音・演奏解釈実技のレッスン・バロックダンス ―

バッハの学校岡山特別講座では、バロック音楽とダンスの総合的な理解を目的として講座を行っています。ドイツのマイスターによる素晴らしい楽器クラヴィコードのタッチを経験でき、オルガン、チェンバロ、ピアノ、弦楽器など、あらゆる楽器でバロック音楽を演奏される方々の演奏のヒントになります。第8回秋講座では、クラヴィコード奏法、通奏低音(伴奏法)初歩、バロック・ダンス、またバロック舞曲演奏解釈の時間に舞曲ジーグを取り上げます。ジーグは、今日よく知られた8分の6拍子で書かれたものだけではありません。ジーグの歴史はイギリスやフランスの宮廷、またイタリアのオルガン曲や弦楽器の曲などに見出されて様々な様相をみせています。それらのテンポやリズム感、装飾音の弾き方など、講義とピアノのレッスン、クラヴィコード演奏やバロック・ダンスのステップを学びながら理解を深めます。

 

(記.臼井雅美)

 

講義内容

クラヴィコード奏法

 

通奏低音初歩講座

  数字付和音の読み方、伴奏法

 

講義:舞曲ジーグの歴史、起源と変遷

  ルネサンスのオルガン/鍵盤曲からフランス・バロック様式、イタリア様式のジーグ、バッハのジーグまで

 

ジーグ演奏解釈レッスン

  バッハに関わりの深いフランス・バロックの作曲家によるジーグの作品伝統を学ぶ

 

バッハのジーグ演奏解釈レッスン

  フランス様式とイタリア様式のテンポ感、リズム感、響きの違いを学ぶ

  バッハ:フランス組曲より第2番&第5番

 

バロック・ダンス

  ジーグのステップを学ぶ、ジーグとアルマンドの関連性を巡る

 

音律にまつわる解説

  (古楽器演奏の基礎知識)

第7回特別講座 ― クラヴィコード・通奏低音・演奏解釈実技のレッスン・バロックダンス ―

バッハの舞曲を演奏するために必要な知識 ー 「楽器の響き」「舞曲のリズム構造と拍節、拍感」「和声の流れ」「バロック装飾音の演奏法」 ー これらの内容にアプローチするには、クラヴィコード奏法、通奏低音、バロック・ダンスに加え、バッハ自身も学び深く影響を受けた17・18世紀フランスのクラヴサン楽派の作曲家達の伝統を捉える必要があります。これまでにもその背景には触れておりましたが、第7回春講座では、この楽派の代表的な二人の作曲家 ルイ・クープランとフランソワ・クープランの舞曲を取り上げてバッハの舞曲と併せて実際に演奏することで読み解き、バッハ演奏の向上につなげます。また今回はバッハの好んだ弦楽器ヴィオラによる参考演奏もお願いし、響きの多様性から舞曲の様式をさらに学びます。

 

(記.臼井雅美)

 

講義内容

クラヴィコード奏法

 

通奏低音初歩講座

  数字付和音解読と実践法 初歩

 

バッハの舞曲演奏法 解説とレッスン 「アルマンド(第3回)」

  フランスのクラヴサン楽派からバッハまでの舞曲の伝統を学ぶ

  フランソワ・クープラン 「ヴェルヌイユ夫人のアルマンド」

  バッハ フランス組曲第5番 アルマンド

  バッハ 無伴奏チェロ組曲第5番 アルマンド

 

バッハの舞曲演奏法 解説とレッスン 「クーラント(第2回)」

  ルイ・クープラン 「クーラント ラ・ミニョンヌ」

  バッハ フランス組曲第1番 クーラント

 

バロック・ダンス演習 「アルマンドとクーラント」

  基本ステップと振付を踊る

第19期(2020年度)講座
通常講義

第1講義:聖書と音楽

昨年度まで偶数月の木曜講義として行われていた聖書テキストと音楽作品の関係について、今年度は特にウルガタ(ラテン語訳)を中心にモンテヴェルディ等の作品を取り上げる。同日の第2講義ルネサンス=バロックの芸術概念の理解にも関わる内容の講義です。

 

(記.丸山)

第2講義:ルネサンス・宗教改革と芸術観 ― 中世からバッハへ、バッハからモーツァルトへ ―

バッハ作品の構造を決定し、同時に表現内容を告知する「数による形象」は少なくとも中世に遡る伝統に立つものである。

 

今年度の本講義ではダンテやペトラルカの文学作品と、バッハの音楽作品との間に存在する共通の思考形態である「数的構想」について検証する。

 

ペトラルカの著名な詩集『カンツォニェーレ』は多くの作曲家に創作のインスピレーションを与えて来たが、この詩集がアルキメデスの円周率に基づいて構築されたことは、なお謎に属していると思われる。先ずはその謎解きから一歩を踏む。

 

(記.丸山)

第3講義:Musica poetica ― ことばの響きを求めて ―

モーツァルトのウィーン時代の創作に深い影響を与えて死を巡る名作を書かせたモーゼス・メンデルスゾーンの『フェードン』と、アリストテレスの『詩学』に基づく、魂の激しい高揚をもたらす「モーツァルトの短調」に照明をあてながら、同時期の歌曲テキストの解析を通じてピアノ・ソナタ等の響きを追究する。

 

(記.丸山)

新講義『バッハの楽譜を読む』

「見ること」は「識ること」を意味する。楽譜を読むことは即ち楽譜を良く見ることから始められる。 楽典的・機械的な分析ではなく、読むことが「響き」を識ること=演奏の基礎段階となるべく、分析=楽譜をルーペを片手に眺めてみる。次の三点から、この作業はなされる。

 

  1. バッハの「組曲」の分析
  2. バッハ時代の演奏法
  3. 古代ギリシアに遡る修辞=弁論の歴史

 

(記.丸山)

※以下、それぞれの講座名をクリックするとチラシを見ることができます。

 

第18期(2019年度)講座

通常講義

  • キリスト教・聖書の美と解明
  • パストラーレ展望 ― カンタータとオルガンのコラール ―
  • ミサ・典礼と音楽
  • ピアノは語る — 鍵盤に読む精神史 —
第17期(2018年度)講座

通常講義

  • ギリシアのハルモニア・哲学の響き
  • バッハ講義 - カンタータの諸相 -
  • ルネサンスのハルモニア・調和の実践
  • ピアノは語る - 鍵盤に読む精神史 -
第16期(2017年度)講座

通常講義

  • ギリシアのハルモニア・哲学の響き
  • バッハ講義 - カンタータの諸相 -
  • ルネサンスのハルモニア・調和の実践
  • ピアノは語る - 鍵盤に読む精神史 -
第15期(2016年度)講座

バッハの学校 岡山 第15期

 

  • ギリシアのハルモニア・哲学の響き
  • バッハ講義 - カンタータの諸相 -
  • ルネサンスのハルモニア・調和の実践
  • ピアノは語る - 鍵盤に読む精神史 -
第14期(2015年度)講座

バッハの学校 岡山 第14期

 

  • バッハ講義 - プレリュードとフーガ -
  • ピアノは語る - 鍵盤に読む精神史 -
  • ギリシアのハルモニア・哲学の響き
第13期(2014年度)講座

バッハの学校 岡山 第13期

 

  • バッハのアトリエ - テキストのフィグーラ探求 -
  • ピアノは語る - 鍵盤に読む精神史 -
  • ギリシアのハルモニア・哲学の響き
第12期(2013年度)講座
第11期(2012年度)講座
第10期(2011年度)講座

バッハの学校 岡山 第10期 『バッハとミサ』

第9期(2010年度)講座
第8期(2010年度)講座
第7期(2009年度)講座
第6期(2009年度)講座
第5期(2008年度)講座
第4期(2008年度)講座
第3期(2008年度)講座
第2期(2007年度)講座
第1期(2007年度)講座
『流れよ、わが涙』(2006年度)
『王の宴に』(2005年度)
『バッハと聖書』(2004年度)